『野ばら』の研究

　　童は見たり　野中の薔薇…

　この歌詞を聴くと思い出すのはシューベルトやウェルナーが作曲した歌曲『野ばら』ではないでしょうか。耳馴染みの音楽は国を超えて、時代を超えて世界中で親しまれています。ところで、彼らだけではなく世界中の作曲家が様々な"色"の『野ばら』を作曲している事をご存知ですか。2013年1月現在、94人の作曲家による100曲の『野ばら』の楽譜が現存しています。歌詞は一つでも、音楽は様々に表現されているのです。

　これまで『野ばら』は文献上154曲も存在し、その内91曲の楽譜が現存するとされてきました。

　ならば…

　　「未発見の楽譜を自分の手で探し出したい!!」　　

　そんな強い想いから「野ばら発見の旅」が始まり、僅か二ヶ月の間に未発見とされていた8曲の『野ばら』の楽譜を収集する事に成功たのです。　新たなる『野ばら』と出会う為に様々な国や都市を訪ねました。拠点となるウィーンから調査が始まり、プラハ、ブラティスラバ、ミュンヘン...と徐々に調査が広がりドイツ国内では北から南まで10以上の都市を駆け巡りました。

　ところで、『野ばら』の楽譜を探し続けているのは僕だけではありませんでした。『楽譜「野ばら」91曲集』（坂西八郎編、岩崎美術社、1997年）を編集なさった故坂西八郎先生の遺志を受け継ぎ、北海道放送様も楽譜を探し続けていたのです。そして既にヴィルヘルム・タウベルト作曲の『野ばら』を収集なさっていました。北海道放送では1987年に「童は見たり」～世界最大のヒット曲『野ばら』の謎を追おう～という番組を制作されていて（私も拝見し大変感動した番組ですが）、その番組での調査の後も『野ばら』の楽譜を探していらっしゃるそうで敬服する思いです。

　こうして北海道放送様よりお預かりした1曲を含め、全100曲の『野ばら』の楽譜が手元に揃いましたが、演奏家としては楽譜を収集するだけでは満ち足りず、これら全100曲を演奏する演奏会「野ばら×９１」～91人に囲まれたゲーテ～（2012年11月18日開催、北とぴあ つつじホール）を企画したのです。企画当初は、よもや自分自身が新発見の楽譜と出会えるなどとは夢にも思わず、『楽譜「野ばら」91曲集』に掲載されている91曲全てを演奏する事しか考えておりませんでしたので、まさに嬉しすぎるハプニングが到来したのです。自分自身の手で発掘し収集した楽譜を自分自身の身体を通して演奏し表現出来た事を大変嬉しく思っております。

　一つの詩が多くの作曲家や聴衆らを魅了し、様々な視点や解釈による『野ばら』が生まれました。一曲として同じ曲は存在しません。一曲一曲に作曲家の魂やメッセージが込められており、それを再現（演奏）する事が演奏家の使命ではないでしょうか。これまで脚光を浴びて来なかった楽譜を掘り起こし、楽曲の命を繋ぐ事に大変魅力を感じ邁進してまいりました。今後も楽譜の発掘調査や研究は継続して行います。楽譜は演奏されてこそ真の魅力を発揮するのです。100曲もの『野ばら』にはそれぞれに色があり、魂があり、メッセージが込められています。それら全てを感じ演奏し皆様にお伝え出来ましたらそれ以上の喜びに勝るものはありません。

画像：(C) Roberta F.

メニュー

• ホーム
• ご挨拶
• プロフィール
• 演奏会のご案内
• 『野ばら』の研究
• ∟『野ばら』との出逢い
• ∟詩『野ばら』
• 　∟「アダムとイヴ物語異聞」
• ∟たくさんの『野ばら』が生まれた理由
• ∟詩人 ゲーテ
• ∟94人の作曲家
• 　∟作曲家から見た『野ばら』
• ∟楽譜発見記
• 　∟新発見の『野ばら』達
• ∟演奏会「野ばら×９１」
• 　∟チラシやプログラムなど
• ∟写真で見る『野ばら』
• ∟『野ばら』が生まれた地、ゼーゼンハイム
• ∟動画で見る『野ばら』
• 写真館
• 近況報告
• お問い合わせ